ミッツ・マングローブ
ミッツ・マングローブ
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「芸能の消費」について。

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 先週は、明治座で氷川きよしさんの公演を、銀座博品館でドラァグクイーン仲間たちが出演する劇「リプシンカ」を、そして東京国際フォーラムで松任谷由実さんのコンサートを観ました。さらに生番組でピーターさんと共演した次の日には、別のテレビ局で4年ぶりに美輪明宏さんとお会いするという、「プライド月間」の名にふさわしい見事なまでの虹色ウィークでした。

 一方で、家ではリリースされたばかりの山下達郎さんの新譜や大江千里さんの全曲集に針を落とし、吉田拓郎さんのラストアルバムとBTSのベストアルバムをネット注文。これから発売のKinKi Kidsの新曲と竹内まりやさんのアルバムも予約しました。机の上には未開封のKing & Princeのアルバムや、レコード会社の人から頂いた中森明菜の再発シリーズのCDやらが山積みになっています。

 もちろんこれがすべてではないものの、こうして羅列してみると、自分が何を観て聴いて好んで選んで生きてきたのかがよく分かります。先日ラジオ番組で、山下達郎さんが「芸能とはユーザーが自分の生活や歴史を対象化した賜物である」的な話をしていましたが、まさにそれです。加えて私の場合は、これらの要素をなんだかんだと「飯の種」にしています。言うならば、ユーミンや明菜やジャニーズを消費し続け、ピーターさんや美輪さんといった先達が歩んできた轍を辿ることで、様々な仕事を得て労働対価を貰い、そのお陰で高級な鰻を食べられている。なんという生産性の高さ。消費のプロ。

 今年の春、FNS歌謡祭にトークゲストとして出演した際、「番組でコラボレーションしたい歌手やミュージシャンは?」という質問をされました。私は「大胆かつ現実味の薄い、だけどワンチャン実現したら面白そうと思える回答」をするのが自分の役割だと判断し、「トニセン(20th Century→坂本昌行・長野博・井ノ原快彦)と星屑スキャット(私が所属する女装3人組)で少年隊をカバーし、お茶の間を凍りつかせてみたい」と答えました。我ながら「ミッツ・マングローブらしさ」「FNS歌謡祭らしさ」、さらには「オカマらしさ」がちりばめられた良い回答だったと思います。しかし、ひとつだけ私の「読み」は外れていました。

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