かつての大日本帝国を構成してきた陸海軍の軍人たちは、どのような心情を持って生きてきたのだろうか。ともに軍事史を研究し、当事者たちの発言にじかに触れてきた2人の著者が、対談を通してその内実に迫る。

 陸海軍での指揮・命令系統の混乱、捕虜の殺害、自衛隊と軍隊とのつながりなど、話は多岐に及ぶが、特に印象に残るのは日本軍の文書改ざん問題だ。陸軍大将・松井石根の「陣中日記」において1千何百カ所が改ざんされた有名な事例をはじめ、軍人たちが保身から、戦後になって史料を改ざんするケースは少なくないと語る。

 最終章では、歴史資料に対する著者たちの向き合い方が語られ、後世に史資料を残すことの重要性を痛感させられる。こうした教訓は、官僚による公文書改ざん問題の真相解明が進まない現在、より一層訴求力を増している。(若林良)

週刊朝日  2020年10月30日号