注目は「義時の最期」
「アサシン善児」とは梶原善演じる「善児」のことで、義時の祖父、伊東祐親(浅野和之)に仕える下人。祐親から与えられた「仕事(殺人)」を淡々とやり遂げていく。その仕事ぶりから、オープニングのキャスティングに名前が表示されるだけで、SNS上で恐怖の声が上がる人物だ。
柏田さんはさらに着目している点を挙げる。
「視聴者離れのリスクを意識しすぎて、『その時代において当たり前なこと』を排除している大河ドラマも過去にはありました。そうすると、どうしてもきれいごとすぎる内容に思えてしまう。その点、『鎌倉殿の13人』は必要なところは必要ななりに描いている」
歴史家・作家の加来耕三さんによれば、鎌倉幕府の正史『吾妻鏡』では、若い頃の義時は北条家にとって「いてもいなくてもいいくらいの存在」だった。
「非常に影の薄い人であり、唯一の『取(と)り柄(え)』と言えば、北条政子の弟であり、頼朝が目をかけていたということ。それでかろうじて歴史上に名が残っている程度です。十三人の合議制では、北条家だけが時政、義時と親子の二人が入っており、本来は大きな問題となるところを、義時がものの数と思われていなかったため、そのままになっています。私はよく思うのですが、義時タイプは平成生まれの日本人に多い。半歩引いていて、自分に自信がなく、能力がないという自覚があり、周囲に目立たぬようにしている」
加来さんが今後注目しているのが、義時の最期だ。
「毒殺されたのではないか、との説があります。ここをクライマックスでどう描くのか? 大変興味がありますね」
今からでも、要チェック。(ライター・羽根田真智)
※AERA 2022年7月11日号より抜粋