義経(菅田将暉)も強烈な印象を残した。「これだけの義経は、今後だれも描けないのでは」(山下さん)(第16回「伝説の幕開け」から) (c)NHK
義経(菅田将暉)も強烈な印象を残した。「これだけの義経は、今後だれも描けないのでは」(山下さん)(第16回「伝説の幕開け」から) (c)NHK
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 三谷幸喜脚本の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が面白いと話題だ。テレビ番組のライターや脚本家が語るその魅力とは。AERA2022年7月11日号の記事を紹介する。

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「三谷脚本が好き。人物の描写がいいんです」

 こう話すのは、週刊誌でテレビ番組の連載コラムも持つライターの吉田潮さん。「たとえば」と挙げてくれたのが、「鎌倉殿の13人」が始まって間もない第4回「矢のゆくえ」の一シーンだ。源平合戦の火蓋(ひぶた)が切られる前、頼朝は挙兵を決断するものの、平家の威光の前に兵が思うように集まらない。そんな中、意気揚々と志願してきた老兵が、佐々木秀義(康すおん)。歯がほとんど抜け、何を言っているかよくわからない。頼朝とも会話が成立しているとは言いがたい。しかし佐々木は、とうとうと源氏方への熱い思いを語り続ける。

「大物武士ならいざ知らず、こんなお年寄りの武士、大河にはほぼ出てきませんよね。三谷脚本では、名もなき人物のキャラクターも作り込まれている。本当の歴史は、日常生活の営み、どうでもいい小競り合い、みっともない人間の集合体でできていると考えているのですが、まさにそれを感じられるんです」(吉田さん)

どう“嘘”をつけるか

 権力に従わない女たち、権力を手玉に取る女たち、男たちの手綱を握る女たちが幅を利かせるところも、いい。

「頼朝の妾(めかけ)の亀(江口のりこ)や義時の継母りく(宮沢りえ)らの策士っぷりが心地よい。マウント合戦もするし、毒舌も吐く。一筋縄ではいかない女たちが必ずと言っていいほど登場するのも魅力です」(同)

八重(新垣結衣)は義時の初恋の人で妻。不慮の水難事故で亡くなる。放送後はTwitterのトレンド1~3位に「鎌倉殿の13人」「八重さん」などが並んだ(第21回「仏の眼差し」から) (c)NHK
八重(新垣結衣)は義時の初恋の人で妻。不慮の水難事故で亡くなる。放送後はTwitterのトレンド1~3位に「鎌倉殿の13人」「八重さん」などが並んだ(第21回「仏の眼差し」から) (c)NHK

 大河ドラマは「史実と比べて云々(うんぬん)」といった指摘が往々にして入る。時代物やミステリーを多く手がける小説家・劇作家・脚本家の柏田道夫さんが言う。

「そもそもドラマは史実通りに作っても面白くない。史実を読み込み、史料を調べた上で、どう“嘘(うそ)”をつけるか。歴史上の人物を、実はこうだったかもしれないというフィクションを織り交ぜてわかりやすく描く。『アサシン(暗殺者)善児』のような架空の人物を放り込み、視聴者を楽しませる。また、三谷さんは映画『ゴッドファーザー』が好きだそうなんですが、父からファミリーを継ぐ三男(アル・パチーノ)のキャラクターが義時のポジションに似ていて、ゴッドファーザーが反映されているなとも感じます」

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