「もう数え切れない人の保証人にもなっているし、銀行にも借りられるだけ借りた。だから、もういいんです。家族の使えるお金が15万円しかない時でも、目の前の人が助かるなら躊躇(ちゅうちょ)せずに10万円包んで渡す人、それが奥田知志ですから。止めても無駄なんです」

 そして、こう結んだ。
「でもね、彼はサラリーマンの家の息子ですが、私は牧師の娘。覚悟が違うんです。最初から金は天下のまわりものだと思っていますし、神様はきっと見てくださっていますから」

 もう、絶対にひとりにしない――。目の前の人間が助かるのであれば、立っている親でも使え。いつかきっと、笑える日がくるから。

(文中敬称略)
 
■おくだ・ともし
1963年 7月15日、大津市生まれ。
 77年 8月、大津キリスト福音教会で洗礼。クリスチャンに。
 82年 関西学院大学神学部入学。大阪市西成区の釜ケ崎(あいりん地区)で支援活動を始める。
 88年 関西学院大学大学院神学研究科修士課程修了。西南学院大学神学専攻科入学。
      伴子と結婚。子ども3人。長男・愛基、長女・光有、次男・時生。
 90年 西南学院大学神学専攻科修了。東八幡キリスト教会の牧師に就任する。ホームレス支援「北九州越冬実行委員会」事務局長に就任。翌年、代表に就任。北九州市内の公園で炊き出しを開始する。
 97年 九州大学大学院博士後期課程入学。国際比較文化研究所。
2000年 NPO法人北九州ホームレス支援機構設立。理事長となる。
 01年 九州で初めてのホームレス自立支援施設開所。
 04年 公設民営型施設「ホームレス自立支援センター北九州」開所。
 06年 下関放火事件。被告の身元引受人となる。
 07年 ホームレス支援施設「抱樸館下関」開所。
 10年 NPO法人ホームレス支援全国ネットワーク設立、理事長就任。刑務所出所者のための「地域生活定着支援センター福岡」開所。
 11年 東日本大震災を受けて一般社団法人共生地域創造財団設立、代表理事就任。
 12年 伴走型支援士養成講座を開始。厚生労働省社会保障審議会委員就任。
 13年 活動25周年を機にNPO法人の名称を「抱樸」に変更する。「抱樸館北九州」開所。
 14年 一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク設立、共同代表。
 17年 サブリースによる生活支援付き住宅プラザ抱樸開所。
 19年 一般社団法人全国居住支援法人協議会設立、共同代表就任。国土交通省社会資本整備審議会住宅宅地分科会臨時委員就任。

■中原一歩 
1977年、佐賀県生まれ。ノンフィクションライター。本欄では、二階堂ふみ(女優)、奥田愛基(SEALDs創設メンバー)などを執筆。最新刊に『マグロの最高峰』(NHK出版新書)。

AERA 2020年3月9日号

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