イギリス人ジャーナリストによる、何千年にも及ぶ人類対ウイルスの攻防史。原著は2008年の刊行で、もっぱらインフルエンザとの闘いがテーマだが、現況を見据えた日本語版独自の補章も追加されており、新型コロナウイルスといかに闘うかを学ぶ上でも十分に参考になる。

 1930年代に電子顕微鏡が登場するまでは、存在さえ確認されていなかったウイルス。それから100年足らず、未知の要素も多いという。最悪のパンデミックといわれる「スペイン風邪」が猛威を振るっていた当時の状況には、昨今の世界を見るような既視感を覚えるものも少なくない。それでも、この病魔の克服に向けて、人類の叡智が着々と歩を進めてきていることは確信できる。肝腎なのは「正しい知識」なのだということを再認識させられる一冊。(平山瑞穂)

週刊朝日  2020年6月26日号