●ガスライティング「誤解を招く情報操作」のような意味

 ガスライティングは日本ではあまり耳馴染みがないが、英語圏ではしばしば使われている。もともとは、相手に対する誤った情報を提示して、その本人にさえもそう思い込ませるという心理的虐待の一種を指す言葉。「誤解を招く情報操作」のような意味で使われることも多い。

 例えば、「りんごさんチーム」というチームがあったと仮定する。その「りんごさんチーム」への評判を貶めるために、「またりんごさんチームかwww」「りんごチームが出てきた、はい解散」「りんごチームについての噂、もうみんな知ってるよね?」「りんチー顔真っ赤」「りーん(笑)」など、すでにりんごチームに悪い評判があるかのように言い立てるのもガスライティングの一つ。

 自分がりんごチームに悪感情を持っていることを、“コミュニティー全体の総意”であるかのように置き換えるのだ。

 具体例を挙げることはなかなか憚(はばか)られるのだが、日本のツイッター上でもすでに観測される言動だ。最近話題になっている誹謗中傷の中でも悪質な類だと感じる。直接的なバッシングではなく、巧妙だからだ。

●ミソジニー「女性嫌悪」を意味する言葉

 ミソジニーは、日本語の三十路(みそじ)とはまったく関係ない。「女性嫌悪」を意味する言葉がミソジニーだ。

 ミソジニストとは、女性を苦手とするシャイボーイのことではない。「根源的に女は男より劣っている」「女性が男性を抑圧しているから男性が生きづらいのだ」「女は男に寄生している」といった思想の持ち主のことを指す。

 女性差別的な思想なので、「性的に女性を求めること」とミソジニーは両立する。むしろ、女性の価値を性的な部分においてだけ求めようとするのは、典型的なミソジニーともいえる。

 韓国では、2016年に女性を狙った殺人事件(江南駅通り魔殺人事件)が起こったときに女性嫌悪による「ミソジニー殺人」だと言われ議論を呼んだ。

 また、カナダで1989年に起こったモントリオール理工科大学虐殺事件では、犯人はフェミニズムを嫌い女性だけを14人殺した。「フェミサイド」と言われている。

 最近ではミソジニストと似た意味で「インセル」という語が使われることがある。「非モテ」の男性、「自分が望んだわけではないのに禁欲主義者のような生活を強いられている男性」のことをアメリカでは「インセル」と呼ぶ。

 彼らの特徴は、女性蔑視的な言動を行うこと。

 2014年にアメリカで起こった銃乱射事件の犯人エリオット・ロジャーは自らをインセルと名乗り、インセルたちが利用する掲示板で人気を集めていたという。

 ちなみに、ミソジニー(女性嫌悪)の感情は男性だけでなく女性の中にもあること、それが社会の中にある女性差別から生まれる感情であることは、すでに指摘されている。

 反対に、男性嫌悪は「ミサンドリー」である。

 今回紹介した言葉のうち、6個中5個以上を知っていたなら、ネット言論空間に入り浸っている可能性が高い。ネット言論は、それはそれで楽しいこともあるが、息が詰まる思いをすることもしばしば。

 緩やかな自粛が続く今ですが、たまにはお外の空気も吸いましょう。