●潜伏キリシタンの揺るがない信仰心
日本におけるキリスト教弾圧の歴史は、キリスト教徒と話題にするにはあまりにデリケートすぎるかもしれません。
しかし、物事には様々な面があり、250年もの禁教は、それでも信仰を貫く「潜伏キリシタン」を生み出しました(紛らわしいのですが隠れキリシタンとは、明治維新後も独自の様式で信仰を続けるキリスト教徒を指します)。
長崎にある大浦天主堂は、一八六五年にフランス人のカトリック神父によって建設されました。すでに日本は開国し、徳川幕府が力を失っていたために成し得たことです。
トピックスは、大浦天主堂が落成したとき、250年も隠れて信仰を守ってきた日本人キリスト教徒が来訪したこと。これは当時の世界のキリスト教徒を驚愕させました。
キリスト教徒との会話の際、「日本のキリスト教徒は、少数ながら篤い信仰心を持っていた」という話のネタにしてもいいでしょう。
ちなみに、キリスト教徒が洗礼の際につけられる名前は、聖書から取られることが多く、ファーストネームと同義と考えられることもあります。
英語で多いJamesはヤコブ、Johnはヨハネ、Paulはパウロからきています。日本人キリスト教徒の場合は、姓名の他にマルコ、ジョンなどが追加され、これがクリスチャンネームとされることがあります。
明治維新後は、キリスト教を信仰することが許されたので、キリスト教国が多くの宣教師を送ってきました。
同志社大学、関西学院大学、立教大学など多数のキリスト教系の大学も設立されました。しかし、日本人のキリスト教への改宗は進みませんでした。
現在でも、人口の約1%に留まっています。この少ないキリスト教徒の割合は、イスラム教が国教や国是の国を除くと、世界で最も少ない部類に入ります。
言い方を変えれば、日本は世界で最もキリスト教が浸透していない国の一つです。
この点は、欧米や日本のキリスト教徒とも議論になります。私は、森羅万象に神様が宿ると感じる民族である日本人には、すべてが神様の恵みであり思し召しであると考える一神教の考えが理解できないからだと思います。
日本人のグローバルリテラシーを高めるためにも、自分なりの答えを持っていたほうが良いでしょう。
(山中俊之:神戸情報大学院大学教授/国際教養作家・ファシリテーター)