タコ研究の第一人者が、食材として以外一般にはあまり知られていないこの軟体動物の驚くべき生態、特にその知的能力について解説している。
タコがその卓越した視覚と触覚を用いてさまざまな図形を識別したり、道具を使用したり、コルク栓を抜いてガラス瓶に入ったカニを捕獲したりするというのはまさに驚きだ。群れをなさず、海底にひっそりと単独で暮らすこの動物に、一定の社会性の発露があることを示した実験結果の数々も興味深い。彼らは、体色や姿勢を変えるボディパターン等を駆使して、同種の他個体とコミュニケーションを交わしたり、報酬が手に入る行動様式を他個体の観察から学習したりする能力も十分に備えている。
知性と呼ばれるものが決して霊長類の専売特許ではないということに気づかされる啓発的な書だ。(平山瑞穂)
※週刊朝日 2020年6月5日号
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