レトロな銭湯に愛を注ぎ、リノベーションを手がける建築家が、これまで改築した銭湯の写真を交えながら、それぞれのエピソードを紹介する。
戦後の東京にさかんに建てられた銭湯も今は老朽化し、後継者もなく廃業に追い込まれることもしばしば。著者はそこに新たな息吹を与え、「デザイナーズ銭湯」として蘇らせる。町田市の「大蔵湯」、渋谷区の「改良湯」、新宿区西落合の「栄湯」。人気の湯には若い世代の客も多く訪れる。無名時代から銭湯を歩いて描きためた、理想の風呂のイメージ画も掲載し、その制作過程も明かす。江戸時代の戸棚風呂や石榴口、明治時代の改良風呂など銭湯の歴史も紹介している。
銭湯のリノベーションは、消えゆく伝統文化継承の大事な手段。まずは近場の銭湯でひと風呂浴びて、じっくり読んでみたい。(金田千里)
※週刊朝日 2020年4月24日号