真剣な表情で取り組む子どもたち(写真/筆者提供)
真剣な表情で取り組む子どもたち(写真/筆者提供)
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 部屋の畳一面に広げられた色紙。子どもたちはそれらを横目に、紙芝居の絵の構図を考えています。

【写真】子どもたちが考えた4コマ漫画形式の作品はこちら

 たくらみ中学年(小学3・4年生)クラスが取り組んできた「色」プロジェクトも佳境です。

 構図を検討するにあたり、私は彼らに一つアドバイスをしました。

 それは「はらぺこあおむし」の作者エリック・カールのようにダイナミックに描いてみようということ。自作した色紙の鮮やかさを最大限に活かしてほしかったからです。

 改めてみんなで「はらぺこあおむし」を眺めてみると、その大胆な構図にはっと驚かされました。

 今回、私たちが製作するのは紙芝居なので、遠くから見ても内容がわかることがより強く求められるのです。

「これくらいでっかくてもいいよね?」

 最初はこぢんまりした絵を描いていた子も、次第に画用紙いっぱいに表現し始めます。

 作業を進める中で、また新たな課題が浮かび上がってきました。

 ある子の作品は単調な構図が続き、平凡でつまらない印象を与えてしまっていたのです。

 観客に強い印象を残すためには、どの場面を切り取って、どう見せるかが重要になってきます。

 ああでもないこうでもないと子どもと一緒に考え、構図を見直すと、登場人物が生き生きと動き始めます。

(写真/筆者提供)
(写真/筆者提供)

 絵の下書きが完成すると、いよいよコラージュ制作に取り掛かります。

「この模様、なんか魚の鱗みたいやし、良いかも」

「トビの羽に使えそうなのは……あった!」

「ゴミ袋っぽい色のあるかなあ」

 たくさんの色紙を前に、子どもたちは想像を膨らませます。

 作品をイメージして色紙を作った訳ではないのですが、なぜかそれぞれの場面にしっくりくるものが必ず見つかるのが不思議です。

 彼らは下書きの線に合わせて色紙を切り取り、それらを画用紙に貼り付けていきます。

 色紙の模様をそのまま活かして大きく切り取る子がいるかと思えば、細かい部品に切り分けて組み合わせる子もいたりして、こんなところにも性格が表れます。

 いつもはおしゃべりでにぎやかなクラスですが、切り貼り作業に没頭する様子が見られました。

 本プロジェクトの締めくくりとなるのはストーリーの仕上げです。

 起承転結に則って4コマ漫画形式で紙芝居を製作してきた子どもたち。紙芝居としての質をさらに高めるため、「情景」「心情」「会話(台詞)」の3つのポイントを意識しながら、ストーリーを洗練させていきました。

 出来上がった作品をひとつご紹介いたします。

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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