頂生尊尊者
頂生尊尊者

 頂生尊尊者は目を細め、歯を見せながら声高らかに笑っている。実際、「あーっ、はっはっ」と声が聞こえてきそうだ。じっと見つめていると、自然とこちらも笑いたくなってしまいそうなパワーを感じる。

 一方で、鉢を持つ声引衆尊者の控えめな目線には、人を安心させる力がある。

鉢を持つ声引衆尊者(手前)
鉢を持つ声引衆尊者(手前)

 羅漢とは釈迦の弟子たちのこと。釈迦の教えに従って修行を積み、煩悩を払い、インドでは「アラハン」と讃えられた。仏教がインドから中国に伝わり、「アラハン」の発音を「阿羅漢(あらかん)」と漢字で表現した。そのうち、「阿」がとれて「羅漢」と呼ばれるようになったと言われる。

 有安さんが「よく見ると羅漢さんにいろいろな説明が書いてある」と気づいた。

 案内していた五百羅漢寺の佐山拓郎住職が、こう説明してくれた。

「羅漢さんの名前の書かれているお経をもとに現代的な解釈をして、わかりやすくメッセージを表記していますので、1体1体丁寧に見ていけば、どんな人にもちゃんと刺さります。じっくり見ていただければ、あなただけの羅漢さんに出会えるはずです」

 有安さんは2019年、初めての写真作品集「ヒカリの声」(クレヴィス)を出版した。今回の「ももかアイズ」のシリーズで初めて、仏像の撮影にチャレンジしている。こう手応えを語る。

「仏像を撮るのは人物を撮るのと同じですよね。お一人お一人の表情を引き出すのが難しかったです。いい経験になりました」(有安さん)

羅漢堂内の五百羅漢像
羅漢堂内の五百羅漢像

 大力尊者の前には、「信念と努力が大きな力をつくる」。無垢蔵尊者のところには、「人のいやがる仕事をすすんでやる」と書かれている。釈迦の一人息子である羅怙羅尊者は、両手で体内にある仏の姿を見せていて、特に印象に残る。

羅怙羅尊者
羅怙羅尊者

 羅漢堂の出口で有安さんが立ち止まった。安置されていた「獏王像」に目が止まる。獏(ばく)は中国の想像上の動物。人間の悪い夢を食べ、良い夢を与えてくれるという。羅漢堂のものは、人面牛身虎尾で顔と腹の両側に3つずつ、計9個の目がある異形だ。

獏王像
獏王像
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佐山拓郎住職による「ドラクエ法話」とは