■自然に存在する植物だけの色で染め重ねる
お散歩へ出掛ける時、お気に入りの色のハンカチをバッグの中に忍ばせておくだけで、開けるたびに嬉しくなります。長く使い続けていきたくなる愛着の一枚。受け継がれてきた思いや、作られる工程を知るとますます愛おしくなってきます。江戸時代後期から代々染織を手掛ける老舗「染司よしおか」。絹、麻、木綿などの天然素材に、茜、ザクロ、藍、どんぐりなど約50種にのぼる植物を使い分け、繊細に染め重ねていき、ハッとするような美しい色や落ち着きのある深い色合いを表現されています。店内には軽やかなストールや鮮やかなピンクのバッグ、ポーチなど色とりどりの小物が並び、好きな色のグラデーションのハンカチを色違いで揃えたくなってしまいます。
「受け継いできた古法のままに、素直にきれいな色を時間をかけて出すことに心を注いでいます」と、六代目染織史家の吉岡更紗さん。工房のある伏見の清らかな水と自然界に存在するもの、そしてそれに向き合う人の手により生み出された美しいひとつの色は、温かさに溢れています。
■愛しきちいさい編み小物
春は、心がワクワクと弾むようにお散歩を楽しみたいですよね。胸元にそっと飾られたちょうちょのブローチや編み目の美しいコインケースは、一層気分を引き立ててくれます。繊細に編まれた作品は、一体どのようにして生まれたのでしょう。大正時代に元修道女の寄宿舎として建てられた左京区吉田の「白亜荘」。その中の一室にtricotriさんのアトリエがあります。和菓子のパッケージデザインのお仕事をされたのち、お気に入りの洋服店で出された飲み物に敷かれていた手編みのコースターに出合ったことが編み物をはじめたきっかけだそうです。
「私も編んでみたい!それからは、夢中でたくさん編みました。ひとめ、ひとめ丁寧にきっちりと編むことを大切にしています」とtricotriこと小林恭代さん。0.4mmの極細のレース針と綿のレース糸から作られる作品は、緻密で繊細な中にも、やわらかさと優しさが感じられ、和やかな気持ちにさせてくれます。