「日本酒を嗜む会」の会席料理ツアーの様子。(中道あんさん提供)
「日本酒を嗜む会」の会席料理ツアーの様子。(中道あんさん提供)

 中道さんをサードプレイスに導いたのは、ある料理屋でおいしい日本酒を飲んだ経験だった。

「それまで日本酒はまずいものだと思いこんでいたのに、そのお酒はめちゃくちゃおいしかったんです。思い立って店のご主人に日本酒について教えてとお願いしました。ブログで告知して人を集め、地酒を飲みながら日本酒の基本の“キ”を教わりました。それが17年から私が主宰している『日本酒を嗜(たしな)む会』の始まりでした」

 年に3、4回、おいしい日本酒を飲むために集まった。19年には東北の蔵元を巡る2泊3日のツアーを実施。翌年初めの東京での新年会を最後にコロナ禍で2年ほど活動できなかったが、この3月に岐阜の蔵元を招いた会席料理ツアーで仲間たちと久しぶりの再会した。

「次の計画を仲間たちと考えるのも、おいしいお酒とお料理をいただくのも楽しい。PTAの集まりや同期会だと、バックグラウンドを知られていて、しがらみを感じるなどウザさもある。でもこの会にはニックネームしか知らない人もいるし、職業もわからない人もいる。単純に集まっておいしいお酒を飲んで楽しむだけ。だから気楽に参加できる面もあると思います。今では私、そして仲間にとっても貴重なサードプレイスになりました。初めておいしい日本酒に出会った“いいな”の気持ちに乗っかってよかったと思っています」(中道さん)

 中道さんの体験は、理想のサードプレイスに出会えるヒントになるだろう。しかし、「その最初の小さな“いいな”が難しい」と前出の石山教授は言う。

「われわれの研究室では“小さな一歩問題”と呼んでいます。多くのミドルシニアは最初の一歩を踏み出せない。情報が少ないから無理と思ってしまう。何も考えず始めてみるのがいいんですけど、それが実は難しい」

週刊朝日 2022年7月8日号より
週刊朝日 2022年7月8日号より

■打率1割でいい まずは第一歩を

 そんな人たちに、石山教授は助言をくれた。

「まずは、学びの場から入ると見つけやすい。たとえば○○教室で一緒に学んだ人と会を作って、終了後も会うなどしてみたらどうか。次に周りの人に誘ってもらう。会話の最中に出てきた面白そうな場所に“自分も連れていって”と言ってみる。三つ目は自治体などが進めるプロボノ部とか、PTAがやっている“オヤジの会”がきっかけになるかも。ただ、最初から居心地のいい居場所に巡り合うとは限らない。『打率1割でいい、というつもりで』と私たちはアドバイスしています。合わないと思ったら、気楽にどんどん別の場所を試すといいと思います」

 前出の潮凪さんは「一人旅をしてみるべき」とアドバイスする。

「旅の間は全部、自分の行動は自分の意思で決めることになる。どこで食事をし、どこを観光するか、どの交通手段で移動するか。2泊もすれば、自分は何が好きで何が嫌いか、わかってくる」

 まだ居場所がない方は、当たって砕けろ精神でまずやってみたらどうか。チャレンジを続ければ必ず行き当たるはずだ。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2022年7月8日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
【Amazon スマイルSALEは9月4日まで】よりお得にするためのポイントやおすすめ目玉商品を紹介♪