●学校休校が大変という気持ちも中国人には痛切にわかる

 日本は民主国家であり、中国のように一斉に強制することができないことは、中国の人々も理解している。とはいえ、今回のウイルスはこれまでと違って、わからないところがあまり多いため、「軽視してはいけない」というのが本音である。

 もっとも、今回の安倍首相による休校の要請に対し、非難する人々の気持ちも多くの中国人は痛切にわかっている。

 そもそも中国の家庭は、ほぼすべてが共働きだからだ。そこへ来て今回の休校措置は、共働きの家庭にとっては困惑しきりの話だ。途方にくれる人も多いだろう。

 中国では、現在も多くの親が「外出禁止」と「在宅勤務」を実行中であり、「仕事と子守り」を両立しようと奮闘中である。

 筆者の知人である上海にいる女性は、4歳の息子と一緒で、自宅は「オフィス兼保育園」に様変わりしている。

 彼女は「自宅勤務は通勤しなくていいので楽そうだけど、実際には会社にいるときよりもはるかに大変で疲れている」と愚痴をこぼしている。

 なぜなら、パソコンで絶え間なく、取引先や同僚とやりとりを行い、社内のインターネット会議などにも参加し、ほぼ「24時間勤務」と同様の状態だからだ。その上、ずっと子どもの面倒も見なければならない。外食もできないので、1日3食の食事も作る。

 それでも、「国のこの措置を理解している。感染を阻止するにはこれしかないだろう。今はまさに我慢の時期だ」と話す。

 また、別の友人は、医療従事者のため自宅勤務ができないが、今は夫婦の親の協力を得て、交代で子どもの面倒を見てもらっている。

●中国では感染のピークは過ぎている

 中国では1月中旬から感染がどんどん拡大した中で、1月23日から武漢を閉鎖。その後、全国一斉に公共施設の閉鎖を実施したのに続き、「外出禁止」や「14日間隔離」「マスク着用」「在宅勤務」「学校の冬休み延長」など、一連の強制策で厳格な措置を始めた。

 中国の人々は「自宅軟禁状態」という不自由な生活を長らく強いられてきた。しかし、これらの対策が奏功したのか、今になって武漢以外の地域では感染者ゼロになり、武漢も治癒し退院する患者数が増えてきた。やっとピークを過ぎて「落ち着いてきた状況」となってきたのだ。

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国の事情や制度が違っても親心は一緒