米ロサンゼルスの路上で女性と踊る辻下敏夫さん(本人提供)
米ロサンゼルスの路上で女性と踊る辻下敏夫さん(本人提供)
この記事の写真をすべて見る

「サードプレイス」──家庭でも職場でもない第3の場所を指す。この言葉が、人とのつながりが希薄になったコロナ生活を経て注目されている。人生を豊かにする“心地よい居場所”、皆さんにはありますか?

【表】「大人の居場所探し」5つのコツはこちら

*  *  *

 米ロサンゼルスの路上で女性と踊る男性は辻下敏夫さん(72)。サルサダンスに自らの居場所を見つけ、まさに今、人生を謳歌(おうか)している。

「体を使うから健康にもいい。楽しいから精神的にも充実できる。若い仲間もたくさんいるから元気をもらえる。この年齢でも女性と知り合える。何よりも、サルサは相手がいないと楽しめないので、相手を思いやり大事にする気持ちが強くなる。一石二鳥どころか五鳥くらいある(笑)。サルサは私の財産です」

 商社を12年前に辞め、今は中小企業診断士の辻下さんがサルサと出会ったのは約20年前。現役時代は「踊る商社マン」と言われるほど熱中し、今はNPO法人日本サルサ協会の顧問も務めるが、サルサにたどり着くまでの道のりは平坦(へいたん)ではなかった。

 残業や暴飲暴食がたたり40歳ごろに体を壊し、体づくりのために水泳、テニス、スキーと様々な競技にチャレンジしたが、どれも長続きしない。何か熱くなれるものが欲しい。そんな思いを強めていた辻下さんは1996年、映画「Shall we ダンス?」を見て「これだ!」と思い立ち、近所の社交ダンス教室に通い始めた。

■サルサで広げた友達との“輪”

「若い頃から踊れることに憧れを持っていたのですが、社交ダンス教室は個人レッスンが中心で、先生としか踊れない。衣装や場所にも制限がある。イマイチのめりこめずに続けていました。そんなとき雑誌で知ったのがサルサだったんです」(辻下さん)

 サルサは99年ごろから米国でブームになり、2000年ごろには東京・六本木を中心にいくつかのサルサクラブが営業を始めていた。社交ダンスのようにドレスアップする必要もなく、公園でもレストランでも、音楽さえあれば踊れるストリート系のペアダンス。「習おう!」。辻下さんは決意した。

次のページ