近頃、日本では車窓風景を楽しみながら豪華なデザインの車内で地元の食材を使った豪華な食事を楽しめる観光列車が人気だ。そこで、列車内での撮影も楽しめる国内外の観光列車の魅力をお伝えする。
カメラを向けたくなる愛らしいアテンダント
「伊予灘ものがたり」は予讃線の松山駅を起点に、「愛ある伊予灘線」を経由して伊予大洲駅、八幡浜駅へと至るJR四国ご自慢の観光列車である。2014年の登場以来、何度も乗っているが、その度にカメラを向けたくなるのが、エプロン姿も愛らしい女性アテンダントだ。伊予松山を起点とする列車だけに、夏目漱石の『坊っちゃん』に登場するマドンナをイメージするのは私だけではあるまい。
松山駅を発車するとマドンナ、いやアテンダントによるドリンク、続いて食事のサービスが始まるのだが、隠し撮りや無言でカメラを向けるのは失礼というもの。彼女らも、無言でサービスすることはありえないので。最初のドリンクサービスの際、「お飲み物をお持ちしました!」。
このタイミングでカメラを手に、笑顔で「1枚撮らせてね!」。
このひと言で、たいていはうまくいくはず。このとき、1枚と言いながら何枚も撮るのはルール違反。その分、ほかのお客さんのサービスが遅れる原因にもなるので、最初の撮影は1枚程度に。その後、親しくなったら、忙しそうな時間をさけてゆっくり撮らせてもらえばいいのだ。
ただし、ゆっくりといっても撮影はお早めに。トレーにドリンクや料理を載せ、笑顔でサービスする姿は魅力的だが、重いトレーを長時間持つのは気の毒というもの。また、その料理がほかのお客さんがオーダーしたものなら、撮影も慎みたい。
最後に、これまでの失敗談を質問してみたところ、夕日で有名な下灘駅で写真撮影に夢中になりすぎて、危うく「伊予灘ものがたり」に乗り遅れそうになったお客さんではなく、アテンダントさんがいたとか。
汽車は出ていく、私は残る?
写真・文=櫻井寛
※『アサヒカメラ』2020年2月号より抜粋。本誌では観光列車の特集グラビアのほかに、スイスを走る「グルメ列車」も掲載している。