しかしここで見て見ぬふりをすれば、前述の会社のように「パワハラを野放しにする企業風土」ができていきます。今はよくても、会社としての信用はだんだんと落ちていき、それに伴って業績も落ちていくことでしょう。
●パワハラを間接的にやめさせる
パワハラはまさに、経営における「会社全体の重要課題」なのです。見て見ぬふりをしていればやり過ごせるような軽い問題ではありません。放っておけば、いずれ会社そのものを滅ぼしかねないのです。
ただ、「見て見ぬふりをせずに行動を起こせ。報復を恐れずにパワハラ上司を告発しろ」と言われても、なかなか難しいものがあります。
私が講師を務めるビジネススクールで「隣の部署のリーダーのパワハラ丸出しの言動を止めるべく、自ら行動に移せますか?」と問いかけると、ほとんどの人が「無理だ」「躊躇する」と答えました。「あの人の部下はかわいそうだ」「あいつの言動はひどい」と陰で話はするものの、その問題を自らが動いて正せるかといえば、現実的には非常に難しいです。
しかし「パワハラを防止すべく、会社に対して『健全なコミュニケーションスキルを学び、メンバーとの信頼関係を強固にしたい。部下育成の質を高めたい。そのための学びの機会を設けてほしい』と提案することはできますか?」と問いかけると、ほとんどの人が「それならできます」と答えます。
パワハラ文化を解消するために「正しいコミュニケーションのとり方を学ぶ場」を外部(研修・セミナー)に求め、その輪を広げていくということならば、比較的低いリスクで行動を起こせます。
隣の部署で起きているパワハラに問題意識を感じるあなたの姿勢は素晴らしいです。そこで「見て見ぬふりをして終わらせる」か、「自分に矛先が向かない形であっても、一歩を踏み出す」か。大きな分かれ道です。