「日本の一人親世帯では2世帯に1世帯が貧困」と聞いて何を思うか。「自己責任」と切り捨てる人も多そうだが、本書を読むと、誰もが貧困と地続きであることを自覚するはずだ。

 貧困は犯罪を生む。犯罪が多発すれば直接的な被害も増えるし、防犯コストや罪を犯した者の矯正費用も膨らむ。「対岸の火事」と思っていても、社会全体で貧困がもたらす損失を知らず知らずのうちに背負わされる。

 もちろん、貧困な環境で生まれたから誰もが犯罪に走るわけではない。分かれ目になるのは、自己肯定感を育めるかどうかだと著者は指摘する。過去の取材経験から提示される処方箋は興味深い。

 貧困の議論が深まらない理由は、当事者意識を持てる人が少ないからではないか。子供向けに平易な講義形式で書かれているが、大人がまず読むべき一冊だろう。(栗下直也)

週刊朝日  2019年12月13日号

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