著者は大阪の繁華街で、夜の時間帯にのみ開かれる精神科診療所を営む医師だ。その動機や診療の風景、心の病から身を守るためのヒントなどをまとめた。

 2014年に開いた診療所には、さまざまな患者が訪れる。バイセクシュアルの男性や、風俗嬢、有名企業に勤める夫婦、ずる休みしたいために「うつ病の診断書を出してほしい」とねだる会社員もいる。著者は患者と「友達のような関係」を築き、カウンセリングに重きを置いたアプローチで向き合っていく。

「~ねばならない」という思考を捨てること、食事や睡眠をしっかりとることなど、健康へのヒントは比較的シンプルだ。著者の温かで気取らない姿勢からは、「精神科を受診する」ことのハードルを下げ、早期発見、早期治療につなげたいとの思いが伝わってくる。(若林 良)

週刊朝日  2019年11月8日号