エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 40代でADHD(注意欠如・多動症)の診断を受け、エッセイや講演でも障害について語っています。

 その際に、繰り返し伝えていることがあります。「障害は人の数だけある」「私は一例に過ぎない」ということです。障害などのいわゆるマイノリティーと言われる属性について、誰か一人の話を聞いただけで「ああ、そういうことなのか、わかった」と思ってしまうと、その属性を型にはめてしまうことになりかねません。複数の人の話を聞くことが重要です。発達障害でも、人それぞれに困りごとの内容や程度は異なります。同じ診断名がついていても、日常の生活に大きな困難が伴う人もいれば、適切な支援を受けて問題なく社会生活を送っている人もいます。同じ人でも、置かれた環境や人間関係によって、困りごとが増えたり、軽減したりします。

 発達障害について「なぜ、何を知りたいのか」をぜひ自問してみてください。診断名は、“誰がまともで誰がまともでないか”を見分けるためにあるのではありません。診断は、困っている人が、専門家による適切な助けを得るために必要なものです。

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