映画「生きててごめんなさい」は、2023年2月3日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開(c)2023 ikigome Film Partners
映画「生きててごめんなさい」は、2023年2月3日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開(c)2023 ikigome Film Partners

 高校3年で芸能事務所に所属し、女優活動をスタートさせた後、上智大学に進学。しばらくしてから、本人が「屍期」と呼ぶような、夢に対して無気力になる時期が訪れる。たまたま大学の写真部に推薦されて、講談社が主催するオーディションを受けることになった。見た目やジェンダーロールにとらわれず、新しい時代をサバイブする女性を発掘するプロジェクト。そこで、夢をこじらせた彼女の姿は、審査員の目に新鮮に映った。

「“何もしてないより、ちょっと前進したい気持ちはあってオーディションを受けました”みたいな、本当にこじらせた態度で、オーディションに臨んだら、審査員の方から『女優っぽい』『透明感がすごい』と言っていただけて。(劇作家で演出家の)根本宗子さんから、『もうお芝居はしたくないですか?』と質問されたことをすごく覚えています。私のような何のスキルもない若者に対して、『一緒に仕事をしてみたい』という意思を示してくださったことが、すごく嬉しかったです」

 彼女はその年のグランプリを受賞し、あらためて女優としてのスタートを切ることになった。大学在学中の2017年、オーディションで映画「少女邂逅」の主人公に選ばれ、いじめがきっかけで声が出なくなった少女を好演。昨年には、三船敏郎主演のドラマ「将軍 SHOGUN」のリメイクで、江戸時代の日本を描くハリウッドの新作ドラマへの出演も決定。昨年秋から8カ月間のカナダロケも経験し、国境を超えたモノづくりの楽しさにも目覚めた。

「不思議だったのは、私の日本語のセリフも監督にちゃんと伝わっていたことです。スタッフのほとんどが英語を母国語にしている方だったのですが、日本語のセリフであっても、私の芝居で心が動いたというリアクションをいただけた。カットの声がかかって、監督が満面の笑みを見せてくれたことは、それまで感じたことのない喜びでした。本当の感情は、言語を超えることができるんだなと。今回はドラマでしたが、映画やドラマって、本当に人類の共通言語になりうるという実感がありました」

(菊地陽子、構成/長沢明)

※記事後編>>真田広之に強く影響受け…穂志もえか「国際的な作品にチャレンジしていきたい」はコチラ

週刊朝日  2022年12月23日号より抜粋

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