アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーの言語学を脳科学者が最新の研究成果に基づいて解説し、人間の言語活動に迫る。
著者は、「自然科学としての言語学」を確立したチョムスキーを「世界で最も誤解されている偉人」だという。「人間は『言葉の秩序』を学習によって覚えるのではなく、誰もが生まれつき脳に『言葉の秩序』自体を備えている」という彼の考えは、常識や直感に反する真に革命的なものであると指摘。彼の著書『統辞構造論』に基づいて言語の仕組みを解説したあと、彼の「生成文法理論」の核心となる「文法中枢」というものが、脳内に存在することをMRIなどを用いた脳科学の実験によって実証する。
文系の学問だった言語学を普遍的なサイエンスに変えた彼の理論を知るための素晴らしい入門書。(福島晶子)
※週刊朝日 2019年6月21日号