
――デモに参加して感じた恐れ、無力さ、虚無感、失望、絶望……。自殺志願者となっていく少女がいる一方、彼女を捜し続ける若者たちの心も千々に乱れる。彼女を捜すだけでいいのか、間に合うのか、進行中のデモに参加しなくていいのか……。若さゆえの必死さ、一途さ、真剣な思いにフィクションであることを忘れてしまう。
レン:基本的に映画に出てきた出来事はほとんどリアルに発生したことです。本作はそれを凝縮して一つのストーリーにしたというだけ。苦労したといえば、毎日ゲリラ撮影でしたので、警察の職質が一番しんどかった。大きな困難でした。
ラム:僕がとても苦労したのは、俳優たちの心の状態を保つことでした。レン監督が俳優たちを怒り、僕が怒られた俳優たちのケアをするという立場だったんですよ。
レン:そんなに怒ってないよ。フレンドリーに接していたよ。撮影していない時は一緒にプレイステーションで遊びもしたし。ただ、撮影になると時間など様々な制限があるので、そこはちょっと厳しくしなくてはいけない。年齢が若い子たちばかりだったから、中には遊んでばかりとか、脚本を読まずに来たりという子たちもいた。そこは自分が厳しくして本気にさせない限りはなかなかうまくいかないなと厳しい役割を負いました。
ラム:彼らの中にはデモの参加者もいたから彼らなりのストレスがあったり悩みを抱えていたり。だから、僕はそんな俳優たちの話をよく聞いて、性格を理解した上で必要なアドバイスをしていました。僕は子供が2人いるのでみんなから「お父さん」と呼ばれてたんです。
撮影での新人ならではの苦労といえば、彼らをまず街中での撮影に慣れさせる必要がありました。レン監督が言うように警察の職質もあるので、常に移動しながら撮影するなど、緊張感があったんです。ただ、その状況は今回の脚本に合っていて、常に警察を避けるという点においても映画の中のキャラクターたちの状態にとても似ていた。そこはある意味、うまく活用できたのではと思っています。