正反対、だけど親友。自己中心的、リーダー気質で注目を浴びることに生き甲斐を感じる雄介。温厚で冷静、どこか冷めた眼で社会を見つめる優等生タイプの智也。この2人に関わる人々の視点でそれぞれの日常を描いた、10の話からなる小説。

 死に対する感覚が麻痺した看護師、周りに馴染もうと必死な転校生、注目を浴びたい大学生、出世コースを外れた冴えない中年ディレクター。一見、無関係に思える人々が、雄介と智也を介することで、個々が社会の中で蜘蛛の巣状に繋がっていることを実感させられる。

 前半、独立していた話の流れが、徐々に糸を縒り合わせるかのごとく繋がっていく様が見事だ。最終章、主人公の2人が隠していた真実が暴露される時、本のタイトルに込められた意味が明らかになる。(二宮 郁)

週刊朝日  2019年5月31日号