ランサン号の2等席。ラオ族の王朝の名前を冠し、白地に赤と青のラインの配色はラオス国旗の色だ。中国製=10月27日
ランサン号の2等席。ラオ族の王朝の名前を冠し、白地に赤と青のラインの配色はラオス国旗の色だ。中国製=10月27日
この記事の写真をすべて見る

 人口730万人のラオスと巨大な隣国中国を結ぶ鉄道が開業から1年を迎えた。世界的な観光地ルアンプラバンから国境の町まで乗ってみた。2022年12月19日号の記事を紹介する。

【写真】ランサン号はこちら

*  *  *

 バンコクから空路1時間半。ユネスコの世界遺産に登録されている町、ラオス・ルアンプラバンに飛んだ。現在のラオスの基礎となるランサン王国が14世紀に都を置いた。お寺が多く「仏都」とも呼ばれる。

 ここにも、首都ビエンチャンと中国を結ぶ国際鉄道(ラオス国内約422キロ)の駅がある。コロナ禍のなか、国際旅客列車の運行を止めている国境はどうなっているのだろうか。ラオス側で北の起点ボーテンへ向かうことにした。2等席は16万9千キップ(約1400円)。4年前に訪ねた時に知り合ったガイドに購入を頼んでおいた。切符の発売は、乗車の2日前から。全線人気で売り切れることもあると聞いたからだ。

「信号機が盗まれた。午前便は遅れる可能性がある」。両国合弁で設立された「ラオス中国鉄道会社」が数日前、フェイスブックに告知をアップしていた。「大丈夫か」。心配しながら町の中心部から郊外の駅へタクシーで向かう。路線バスはないのだ。山がちな国土にトンネルを70以上も掘り、着工からわずか5年で開業にこぎつけたものの、発券システムや付随するインフラは追いついていない。

■「中国製」の駅

 駅舎は空港ターミナルのように大きい。屋根は、街並みにあわせた落ち着いた赤茶色だ。

「琅勃拉邦(ルアンプラバン)」。駅の表記はラオス語に漢字が添えてある。駅に入る時の荷物検査も、中国と全く同じ機械。エレベーターからゴミ箱まで中国製。給湯室や赤ちゃん連れの待合室の設備や設計も、中国の駅とそっくりだった。

 一方で、天井はラオスの国花プルメリアをイメージした図案。女性職員は民族衣装の巻きスカートを思わせる制服だ。切符売り場には「僧侶優先」コーナーがある。改札も、柿色の法衣を着た僧が先頭を切った。

 ホームで待っていると、白地に青、赤のラインの車両が、南の起点ビエンチャンからやってきた。中国で在来線を走る車両の色を塗り替え、ラオス国旗の配色に仕上げている。車両の名は「ランサン(瀾滄)」号。

 運転手は中国人だ。中国は数百人規模の技術者を派遣して運行を担いながら、約700人の現地スタッフを育てた。約200人の追加募集をかけている。「3年で中国人はいなくなるから頑張れと言われた」。あるラオス人職員は話す。

次のページ