高血圧治療薬ディオバンの臨床研究をめぐるデータ捏造事件は記憶に新しいところ。背景にあったのは医師と製薬会社の癒着だが、この本を読むと、製薬会社のマネーが実にさまざまな形で医師個人に流れていることがわかる。

 製薬会社から無料の食事をもらっていればいるほど、その会社の推す薬を医師が処方する確率が高まっていると立証した米国の研究もあるという。そのせいで患者は、無駄に高額な薬を買わされているかもしれないのだ。世界でも有数の薬好きと目されている日本人には、聞き捨てならない話だ。

 医療をめぐる利益相反を透明化することが必要と説く著者が紹介するのは、自らが関わるデータベースのプロジェクト、「製薬会社と医師」。いたずらに薬漬けにされないために、患者自身の自衛が求められている。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年5月17日号