
『ツレ猫 マルルとハチ』は、野良猫の厳しい環境にスポットを当てている。ペットショップでとある家族に飼われたものの、ふとした拍子に家から飛び出してしまい、迷子になったマルル。餌にもありつけずにさまよっているところ、地域のボス猫であるハチワレのハチと出会い、行動を共にするようになる。飢えや渇きはいつものことで、雨や寒さから身を守り、ケガや病気をすれば命を落とすこともある野良猫の世界を、猫の視点からユーモアも交えてのぞかせてくれる。涙が出そうになる場面も多々あり。

『猫には猫の猫ごはん。』は、雪の夜に死にかけの子猫を偶然拾ったデザイナー・間野太陽が、その猫を迎え入れることになる物語。
「ユキ」と名付けられた子猫は毒餌を食べて死にかけたこともあり、餌を食べられずにいた。そこで太陽はご飯を手作りし、猫に詳しい知人たちの助けを借りながら、少しずつ猫のことを知り、猫との生活に幸せを感じるようになる。
猫の飼い方や猫への接し方、保護猫活動の実情など、猫飼い初心者・太陽と同じ目線で理解を深めることができる。

『吾輩は猫であるが犬』は、引っ越しの際に家族に捨てられた犬が主人公。小屋に縛り付けられた犬が憧れたのは、自由に動き回る猫。その犬は猫に生まれ変わることができたが、親猫とはぐれて命を落としそうになる。そんな猫を救ったのは女子高生だった。
今度こそお仕えしたいと思った人間である彼女は犬派という皮肉な運命。元犬の猫は、彼女に好かれようとあらゆる努力をすることに──。
表題作がインターネットで反響を呼び、連作短編集として単行本化。猫と人間の絆が丁寧に描かれた、心温まる作品揃い。