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 2代目ゴロー(写真、雄)は当地ブラジルに来て14年。日本生まれの日系一世ならぬ柴犬一世である。

 1代目ゴローもやはり柴犬一世であり、リオで5年、サンパウロで11年生きた。リオ・フラメンゴ海岸をわが庭のごとく走り回り、カリオカ(リオの人)から日本のキツネ犬と呼ばれた。

 2代目ゴローはサンパウロのアパート暮らし。1代目のように砂浜は走り回れず、徐々にストレスがたまってきたため、2年で近郊の山荘へ移した。

 それからは水を得た魚のごとく元気溌剌。山荘での先任ボス犬が亡くなると、その後任についた。ブラジル生まれの3匹の犬たちを率い、ワルガキぶりを発揮。

 食事中のゴローはつないでおかないと他の犬にちょっかいを出す。他の3匹は各々の皿で食べた後、一斉にお互いの餌を交換し合うのだが、この行動がゴローには気に入らない。ボス権限で食べさせなくする。

 当初は山暮らしに慣れないことに加え、柴犬の本能のなせる業か、週日はサンパウロにいる私の後を追って探し求め、裏門の下を掘って逃走。数日後、近くの山中に潜んでいるところを発見した。そこで裏門の下をコンクリートで固めた。

 広い山荘の敷地で犬たちは好き勝手に用を足す。我々はよくその排泄物を踏んでしまい、靴の裏を洗うことが日常茶飯事だった。2代目ゴローがボスにおさまって少したつと、彼らのウンチが視界から消えた。

 注意深く観察してみると、2代目ゴローは山荘の境界付近の木々や茂みの間で用を足し、他の犬たちもそれに倣い我々の通り道を避けるようになったのだ。

 そのゴローも寄る年波には勝てず3年前に14年の生涯を終えた。小生ブラジル在住約50年、2代の柴犬と30年。さて3代目をどうするか思案中。

(井戸川 元さん ブラジル・サンパウロ/72歳/無職)