1995(平成7)年は、松本人志の「遺書」(朝日新聞社)と「松本」(同)が1位と2位を獲得。しかも、「遺書」は230万部超えのダブルミリオンセラー。平成のお笑いブームを牽引してきたダウンタウンが書いた人気エッセイは、同年で1位と2位を獲得する金字塔を打ち立てた。

 平成初期となる1990年代は、テレビゲームが急速に家庭に普及した時期と重なる。ベストセラーにも1990(平成2)年にドラゴンクエストが4位、1993年もファイナルファンタジーが6位など、ゲーム攻略本が目立つ。この頃に本屋に通った人は、どの町の本屋にもゲーム攻略本のコーナーがあったのを覚えているのではないか。ところが、2010年代に入ってから繰り返し上位にランクインするのは「ポケットモンスター」ぐらいになった。その理由について、前出の川瀬氏はこう話す。

「最近では、ゲームの攻略法はインターネットの検索で終わらせる人が増えました。一方で、小学生ぐらいだとインターネットが使えない、あるいは親から接続を制限されていることが多い。そのため、現在でも攻略本を頼りにしていると思われます。ポケモンが強いのは、ドラゴンクエストなどと違って小学生に人気があるからだと思われます」

 平成で最も売れた本は、1999年(平成11)年に発売された「ハリー・ポッターと賢者の石」(静山社)。発行部数は500万部を超えた。ハリーポッターは、続刊でもミリオンセラーを連発し、あまりにも部数が大きいことから、「おばけタイトル」とも呼ばれたほどだ。書店はハリーポッター景気にわく一方、発注のし過ぎで在庫を抱えてしまい、頭を悩ませる店員も多かった。日本中が魔法にかかったかのような売れ行きだった。

 そのほかでは、1999(平成11)年の乙武洋匡「五体不満足」(講談社)、2003(平成15)年の「バカの壁」(新潮新書)が400万部超えを記録。300万部超えは、1995年の春山茂雄「脳内革命」(サンマーク出版)、2000(平成12)年のスペンサー・ジョン「チーズはどこへ消えた?」、2001(平成13)年の片山恭一「世界の中心で、愛を叫ぶ」(小学館)、2006(平成18)年の坂東眞理子「女性の品格」(PHP研究所)、最近では、2015(平成27)年1位の又吉直樹「火花」がトリプルミリオンを達成した。

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これまでにない新しい売れ方も