年末年始に海外を旅行する人も多いだろう。アメリカを旅するバックパッカーたちに人気が高い「グレイハウンド」の長距離バス。だが、ニューヨーカーは意外にも“拒絶反応”を示すという。世界中の危険地帯を取材し、「クレイジージャーニー」でもお馴染みのジャーナリスト・丸山ゴンザレスが責任編集を務めた『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)から、その理由を紹介する。
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アメリカを旅する日本人バックパッカーにとってグレイハウンドという名は特別な響きを伴うはずだ。アメリカの旅といえば、地平線まで続く荒野を力強く駆け抜けていくこのバスの姿を連想する人も少なくないだろう。だから、「グレイハウンドに乗ってくる」と伝えた際の、NY 育ちの友人の言葉は意外だった。
「何かの罰? やめたほうがいいよ。絶対後悔する。絶対に」
NYからニューオーリンズまで行くつもりだった。直線距離にして約2000キロ、30時間の旅程だ。楽ではないのは明らかだが、その反応はいかにも過剰に思えた。その後も6人ほどに意見を聞いたが、その反応はおしなべて同じ。グレイハウンドという単語を聞いただけでげんなりとした表情を見せ、ニューオーリンズまでと言ったあたりで信じられないアホを見るような顔になる。
彼らは説得するような口調でこう語る。アメリカ国内の長距離移動は飛行機を使うのが常識で、バスを使うのはよほど貧しい人か、病気などの事情で飛行機に乗れない人なのだ、と。
NY発ニューオーリンズ行きの片道バスチケットの最安値を調べてみると原稿執筆の段階で148ドル、片道航空券は236ドル(航空会社はJetBlue Airways)。確かに、快適さを優先するなら飛行機を使うべき値段差に思えた。けれど同時に、彼らのグレイハウンドに対する拒絶反応の苛烈さに興味を引かれもした。
そこまで劣悪なのだろうか。ならばそれを体験してみるのも一興だ。