第1詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞した著者の第6詩集。彼女の詩は、意味の連なりとしてとらえようとすると「わからない」。しかし、言葉を絵の具として絵画のようにとらえると、たちまち鮮やかな情景が目の前にひろがる。
《愛するということの、困難さを思い知るのが、年をとるということかなあ、遠のいた海のみなもが、なつかしいね。》
これは、本書に収められた43の詩のうち「二十歳」の一節である。「遠のいた」という言葉によって意識がすーっと引き離され、「海のみなも」の反射する光に、「なつかしい」という遠いものに対する感覚が共鳴する。
それぞれの言葉のもつ印象を順番に再現していったときにたどりつく心象風景を胸に描き、十分に味わってほしい。
※週刊朝日 2018年12月14日号