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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「愛子内親王」について。

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 去る12月1日。天皇皇后両陛下のひとり娘であられる愛子内親王が21歳の誕生日を迎えられました。昨年、成年行事の際に初めて披露されたローブ・デコルテとティアラを身に着けられた美しいお姿は、今なお何度も観返してしまうほどですが、今年のお誕生日映像では、皇居内にある厩舎で飼われている馬たちと触れ合うお姿が公開されました。

 たおやかな笑みを湛えながら白馬を撫で、颯爽かつ悠然と歩く愛子さま。紛う事なき「主(あるじ)」の品格に溢れていらっしゃいます。皇族のお誕生日映像と言えば、御所や御用地の庭を歩かれたり、おもむろに木の葉に触れられたり、整然とした部屋で読書をされたり、工芸品を前に語らわれたりといったものが音声なしで公開されます。言わば「日本一高貴なイメージビデオ」です。その様式美の高さ故に、やや不自然さを感じることも正直ありますが、それは象徴君主一族としての普遍性や安定感を示す上で不可欠な要素なのかもしれません。一方で、「個」や「我」を極力抑えれば抑えるほど、絶対に隠しきれない芯や性(さが)というものは、より際立って見えるもの。今回、愛子さまのお姿から私が感じたのはまさにそこです。

 人は動物に相対する時(ましてやそれを誰かに見られている時)、努めて「慈愛に満ちた自分」であろうとする傾向があります。もちろんそれは、人の母性をくすぐる愛らしさを動物たちが与えてくれるからに他なりませんが、それでも過剰に「(動物に)骨抜きにされた私」を演出してしまうのは、ある意味人間の嫌らしい部分です。しかし、馬たちと触れ合う愛子さまは、いっさいその空間に媚びていないのです。かと言って尊大だったり冷淡だったりするわけでもなく、終始穏やかで瑞々しく、そこに流れる時間と空気を支配なさっている。まさに生来の格、徳、命(めい)といったものを見た気がします。

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