超高齢化社会到来と言われる現代日本。高齢者が高齢者の介護をせざるを得ない「老老介護」はもとより、最近では認知症高齢者が認知症高齢者を介護する「認認介護」といった言葉も登場し、介護による"共倒れ"問題は、誰しも他人事ではありません。
 メディアでも、介護にまつわる事件や事故が取り上げられる機会も多いですが、いざ家族の介護問題に直面すると、どのように接したら良いかわからずに追い詰められてしまう方も多いのではないでしょうか。
 そんな社会問題化している介護問題の切り札として、近年注目を集めているのが、今回ご紹介する"ユマニチュード"。ユマニチュードは、介護問題の専門家、イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが考案したケアの技術で、フランス語で「人間らしさを取り戻す」という意味の造語です。
 両氏の新著『家族のためのユマニチュード』では、ユマニチュードの基本となる、行動科学的なコミュニケーション方法の4つの柱「見る」「話す」「触れる」「立つ」と「ケアの5つのステップ」について平易な説明で紹介。
 親や配偶者の介護は精神的、肉体的にも負担が大きく、強いストレスに疲弊してしまう方、支援の情報が得られず孤立してしまう家庭も数多く存在します。そういう場合、他人の手を借りることに罪悪感を持ったり、うまく介護できない自分を責めたりしてしまいがちですが、同書では「『周囲に助けを求める』ことも、介護のとても重要な技術です」と提唱します。
 介護問題は、いわゆる"根性論"のように個人の努力で乗り越えられるものではないこと、家族だけで抱え込むのではなく、早い段階で行政をはじめ社会的支援を求めることが必要だと訴えています。介護を受ける側はもちろんですが、今現在介護をしている家族を支え、負担を軽減するためには、同書が紹介する体系化されたメソッドは、極めて有効と言えるでしょう。
 ほぼ誰にでも訪れるであろう介護問題。いつわが身に訪れるかわからない今、決して人ごとではないとの思いで手に取りたい一冊かもしれません。