「道に迷ってなかなか目的地に着けないことなど日常茶飯事」との嘆き(?)で始まる身辺雑記集。NHKで広報ツイートを担当したあと退職した著者が、未体験の出来事に遭遇したドキドキをつぶさに語っていくのが面白い。

 親知らずの治療で、幼児のとき訪れて以来の歯科医院。「座ってください」と言われて丸椅子に腰をおろすと、「そこじゃないですよ」と診察台を指さされる。「診察といえばまずは問診だ」と思ったとの弁解を聞けば、なるほどと思う。旅先のバンコクで壊れた携帯電話を交換しようと販売店を探す「幻の店」。タイの人たちは親切に場所を教えてくれるが、ビルの中を下りては上り……。祖母の葬儀を綴った「交渉」も、お経を「できるだけ小さい声で」と値切ろうとする祖父と僧侶のやりとりに爆笑させられる。

週刊朝日  2018年11月23日号