ウクライナ・イジューム付近で撮影された破壊された戦車(AFP/アフロ)
ウクライナ・イジューム付近で撮影された破壊された戦車(AFP/アフロ)

■ソ連崩壊の歴史再び起きるのか

──プーチン氏にとっても、今の状況は予想外でしょうか。

 プーチン氏がどう考えているかはわかりません。しかし、国民はウクライナとの戦争に米国がこれほど関与し、ヨーロッパの国々が支援してくるとは思っていませんでした。

 また、プーチン政権の人たちに比べて、ゼレンスキー氏のチームは若く、30代が中心という世代の違いもあります。デジタル技術を使った情報戦では、ロシアが負けているという実感はあります。

──1991年にソ連が崩壊した理由の一つに、米国との軍拡競争で軍事費がふくれ上がり、ソ連が衰退したことがあります。今のロシアでも同じことが起きるのでは。

 軍事費の増加は深刻な問題です。その可能性もありえるでしょう。また、石油産業の売り上げも減少していて、ロシア国内でも12月から値上げされました。

 2024年にはロシアで大統領選挙が実施されます。プーチン氏は出馬を考えていますが、どの国の大統領にとっても、選挙の時は良い経済状態を保っていたいものです。

 しかし、今回の戦争はハイテク機械を使用した戦争なので、費用を抑えられない。戦争下の状況では良い経済状態であることは難しく、ソ連時代と同じことが起きる可能性はあります。

──ロシア国内では、外資系企業の撤退が相次いでいます。

 戦争が始まってから、トヨタに代表されるような日本の大企業の撤退も相次ぎました。すでに、ロシアからは100万人が国外に脱出したとの報道もあります。その中にはIT技術者など、優秀なロシア人の若者も多数含まれています。ロシアとしてもダメージは非常に大きい。

──今後、戦争は収束に向かうのでしょうか。

 これは、ロシアでも、ウクライナからの意見でもありませんが、停戦の案は現実に出ています。

 具体的には、クリスマスシーズンから1月15日まで休戦をするという案です。この時期、カトリックやロシア正教会のイベントがありますので、宗教的な観点からも、戦争を一時的に止めやすい時期だからです。

 ただ、それが実現するには両国が了承する必要があります。残念ながら、現時点では可能性は低いでしょう。もし実現すれば、戦争を止めるためのステップアップにつなげることができるのですが。

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