──その案はどの国から出ているのでしょうか。
フランスやドイツなど、ヨーロッパの国からです。バチカン市国もこの案を支持しています。
ロシアの人たちも停戦を希望しています。戦争の影響で、ロシア国内の年末年始のイベントも最小限に抑えられました。モスクワでは、年越しに盛大な花火が上がるのですが、それも中止になる動きが出ています。ロシアの人たちも、年末年始は戦争のない状態で迎えたいと思っています。
■平和的解決の道 日本も関与せよ
──専門家の間では、戦争の長期化を予想する見方が強まっています。
ウクライナは、エネルギー資源の半分以上が打撃を受けている状態で、150万人以上が停電の影響を受けています。ゼレンスキー氏にとっても、これ以上の長期化は避けたいでしょう。
ただ、領土の帰属問題が絡んでいるので、ここで両者が妥協するとは考えにくい。ゼレンスキー氏とプーチン氏は似た性格で、ここで引くことは考えていないのではないでしょうか。
──停戦合意の条件は。
ロシアにとっては、自国の安全がほしい。ウクライナが、ロシアの脅威にならなければいいのです。具体的には、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟しないことです。
もともと、ロシアとウクライナは兄弟同士のような国です。ウクライナでも、ロシアに良くしてくれる人はたくさんいました。しかし、戦争を通じてそれが変わってしまった。今では、ロシアと仲良くする人はいません。たとえ戦争が終わっても、ウクライナ人の意識は簡単には変わらないと思います。
──11月には、ポーランドにロシア製のミサイルが着弾し、2人が死亡しました。後にウクライナ軍が発射したものだと判明しましたが、一時はロシア軍による攻撃の可能性も指摘されていました。
ロシアがポーランドに攻撃をしたら、それはNATOとの戦争になります。それはありえません。
ただ、ウクライナにはポーランドを経由して欧米諸国の武器が輸入されています。どれほど性能の良い武器でも、標的を外すことはあります。今後も偶発的な事態が起きる危険性はあります。
──日本ができることはあるのでしょうか。
二つあります。一つは、核兵器を絶対に使用してはいけないと主張すること。もう一つは、平和的解決に向けて進むべきだと訴えることです。
日本は、現時点ではウクライナとロシアの両国と敵対関係になることはありません。だからこそ、平和的解決を訴えていくことに意味がある。これ以上、この戦争が悪い方向に進まないようにしなければなりません。(西岡千史)
※週刊朝日 2022年12月30日号