著者はいじめを語る上で、具体的な根拠を欠いた感情論のみでメディアが動いている側面を疑問視する。本書は、そうした現状への問題意識をもとに、データに基づいていじめを分析し、対策を考える。
本書の射程は広い。いじめの被害場所を英国やオランダなどと比較した調査や、2011年に中学生のいじめ自殺があった滋賀県大津市での大規模な調査などを踏まえ、いじめの構造を分析。ブラック校則や教員の多忙化など、いじめが生み出される要因に迫る。また、著者が運営するNPOの活動を紹介しつつ、大人や学校、メディアが取り組むべき具体的な方法を説く。
いじめがテーマでありながら、著者の問題意識は現代人のさまざまな行動に通底する。深い思慮や綿密な調査を欠いて判断しがちな私たちに、警鐘を鳴らす一冊だ。
※週刊朝日 2018年10月19日号
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