1980年代、プロレス界でドル箱スターとなったタイガーマスク。アントニオ猪木と並ぶ人気を得ながら、なぜ2年ほどでマスクを脱いだのか。タイガーを演じ続けた佐山サトルの半生を描いた評伝だ。
興味深いのは佐山にタイガーマスクへの固執がほとんどないこと。佐山にはプロレスラーとしての顔と、総合格闘技の先駆者としての顔があるが、会社との約束で将来的に格闘技選手になる条件としてプロレスをこなしている印象が強い。実際、タイガーマスク人気で身動きが取れなくなり、プロレスラーを退いて以降の語り口のほうが熱っぽい。
生まれ育った地域や家族、友人まで徹底的に取材することで、佐山の格闘技や人生に対する姿勢も浮き彫りにしている。従来のプロレスノンフィクションの枠におさまらない深みがある。
※週刊朝日 2018年9月28日号
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