国内で所在が確認されている即身仏18体を訪ね歩いた紀行文。近年の即身仏ブームを追い風に、22年前に出版した内容にミイラを守り続ける人々を再訪して新たな取材を加え、復刊した。
ミイラとなった僧侶たちの来歴や、人々がミイラをいかにして守り続けてきたかを小気味よく紹介する。ミイラと聞けば気味悪さを覚えるかもしれないが、著者はそれぞれのミイラの表情について言及したり、地元に伝わるエピソードをちりばめたり、軽妙な筆致で読み手を引き込む。
約四半世紀を経ての再訪は、著者や関係者の置かれている状況が大きく変わった一方、ミイラは何も変わらず、そこに存在していることを教えてくれる。ミイラを通じて死を語ると同時に、生きるとは何かを投げかけてくる一冊だ。
※週刊朝日 2018年9月7日号
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