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 4年前のある夏の晩、バビ(写真、雌、16歳)と散歩に出かけたはずの旦那がすぐに戻ってきた。

「バビが何かに咬まれた!」

 バビの顔にはくっきりと二つの咬みあと。なんと、道端にマムシがいたのだ。夜も遅い時間だったので獣医さんに連絡もできず、ただただ見守るしかない。

 咬まれた口元から喉にかけてみるみる腫れてきて、まるでおたふく風邪にかかったような頬、子牛のような首。ハァハァと息は荒く、痛みのためジッとできないのか、ずっとウロウロ動きっぱなしのバビ。こちらはおろおろするばかりで朝を待ち、獣医さんへ。

「犬はマムシの毒には強いんですよ、たぶん大丈夫です」と注射をしてもらい、ホッ。

 頑健ではない旦那がマムシに咬まれていたなら命はなかったかもしれない、そう思うとゾッとする。そのときの傷は今もバビの口元に残る。主を守った勲章だ。

 バビは息子が小学生のときに飼い始めた。よく息子とバビを間違えて呼んでしまったものだ。

 昔はぐいぐいと力強く旦那をひきずっていたバビ。17歳を目前にした今は旦那にひきずられるようにトボトボ歩き。階段の上り下りは手助けが必要だし、よろけることもしばしば。

 眠っている時間も増え、あれ? 息をしてないんじゃないか?と慌てて、「バビちゃんがダメかも」と家族にLINE連絡する騒ぎ。

 そんなご老体なのに、食欲はあきれるほどだ。ドッグフードの皿に飛びかかるようにがっつく。目もほとんど見えず、耳もあまり聞こえない様子なのに、最後に残るのは食欲なのだなぁ。

 毎夏、松山で開催される俳句甲子園をきっかけに俳句にハマった私は、バビの句もいくつか詠んできた。追悼句を作るのは、どうかまだまだ先であってほしい。

(小野さとみさん 愛媛県/60歳/自営業)

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