●場所は変えていい。3年いたから成果が出たのではなく「どこにいても成果が出た時代」

「いやいやいや」

 あなたはそう思うかもしれません。たしかに、現実はそう甘くはありません。

 社会に出ると、特に今の40~50代の人の中には、若い人に対して「根性がない」という事を言ったりします。その世代は1つの会社に勤めることが美学のような考えを持ち、「転職する人間=根性がなく、成果を出すことができなかった」と解釈する人もいるのは事実です。

 私自身も、新卒で入った日系の大企業や、外資の企業を比較的早いスピードで辞めています。そのため、たまに「お前はまだ何もわかっていないのに、辞めるのか」ということを言われました。

 では、なぜ、こんなことが起きるのか。それは、人間の本質に紐付いています。人間の本質とは「人は自分が経験してきた物事の延長線上でしか、新しいコトを理解できない」ということです。今の若い人と、その親世代では「経験してきたこと」があまりに違います。

 たとえば、高度経済成長期を生きてきた人は「何をやってもうまくいく」世界の中で生きてきたので、「転職なんてする必要がない」と考えます。あるいは、失われた20年を生きてきた人たちは、「たとえ石の上だったとしても長く耐え忍ばなければならない。そうしたら、その先は見える」と考えます。

 一方で、今の若い人たちは違います。彼らはインターネットやテクノロジーの中で生きてきたため、「この前まで良いと言われていたものも、変化して当然である」と考えます。

 この三者の「生きてきた世界の違い」こそが、実は「石の上にも三年」という概念を強引に他者に押し付ける張本人なのです。つまり、ある意味では意見の相違は「仕方ないこと」なのです。

●キャリア論で「年数」だけを理由に説明する人は、全部無視

 では、「石の上にも三年」ではないとしたら、何が本質的なキーなのでしょうか。

 あえて極端にいうとわたしは「すべての問題は人員配置に帰着する」と思っています。どれだけ努力したとしても、そもそもの「組み合わせ」を間違えていると、誰も幸せにならないということです。ましてや「(どんな)石の上にも三年」なんてのは絶対に嘘だと思っています。

 これは友人関係や、恋愛を例にして考えるとわかりやすいでしょう。たとえば、全然ウマの合わない友人と三年いて突然仲良くなる、あるいは、元々生理的に無理な異性と長年いっしょにいて急に好きになる。その可能性は、果たして高いのでしょうか?

 これらの可能性がまったくゼロだとは思いません。ですが、元々「相性のいい人」に比べて、元々「相性の悪い人」を好きになったり、仲良くなったりする可能性が少ないのは明らかです。

 仕事における相性とは「何をするのか」と「誰とどう働くのか」の2つの要素に、自分の能力や適性を掛け合わせたものです。「誰と働くのか」の一要素ですら、上記のように相性による影響は大きい。いわんや、全体における相性の影響度はとてつもないものになるのではないでしょうか。

 実はこれはデータで見ても同じです。詳細は著書『転職の思考法』の中に書いていますが、実は日本は「そもそもどの産業を選ぶのか」によって一人当たりの生産性が約20倍も違います。つまり「どこを選ぶのか」によって明らかにあなたの市場での価値、より直接的に言えば給与の額は強く影響を受けるわけです。石の上に何年いようが、この20倍もの差を覆すのは至難の業です。

 さて、そろそろ終わりにします。何が言いたいのか?あえて極端な結論を一言だけ言うとこうです。

 キャリア論で「年数」だけを理由に、できないと説明する人は、全部無視すべき。

 そんな年数に関係なく、あなたが輝ける場所は他にもあるかもしれない、と。

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