「どうすれば、一生食える人材になれるのか?」「このまま、今の会社にいて大丈夫なのか?」ビジネスパーソンなら一度は頭をよぎるそんな不安。北野唯我氏は、発売たちまち3万部を超えるヒットとなった『転職の思考法』で、鮮やかに答えを示した。「会社が守ってくれない時代」に、私たちはどういう判断軸をもって、職業人生をつくっていくべきなのか。
今回は、「石の上にも三年説がなぜ間違っているか」を北野氏が解説する。
●日本で一番AI人事が進んだ会社の人事が明かす「3年は嘘」
「石の上にも三年ってありますよね?」
目の前の男性はそう、こう続けました。
「今なら確信もって言えますが、あれね、データで見ると【100%嘘】ですよ」
私は驚きました。なぜなら、この発言をしたのは、日本で最も人事におけるAIの活用が進んだ会社の方だったから。その方によれば、個人が適正の乏しいフィールドで三年耐え忍んだからといって、そのことを理由にパフォーマンスが上がることはほぼないそうです。
私は普段、人材マーケットを客観的に見る立場にいますが、その中でたしかに感じることがあります。それは「年数や年齢だけを理由に、他人がキャリアの幅を狭めることほど、悲しいことはない」
ということです。言い換えれば、本質的に、年齢や年数のせいで「挑戦できない」という理屈が成り立つのはミリオンダラーベイビー的な肉体労働ぐらいではないか、と思うのです。それ以外は、はっきり言って思い込みです。その典型例がどんな仕事場でも最低3年は頑張り続けなければならない、という「石の上にも三年」説です。
●野球を10年続ければ大谷になれるのか?
「何年間その仕事をしてきたか」ということは、人が思っているより重要ではないことが多い。分かりやすい例でいうとスポーツです。
早い段階でスポーツの世界で活躍する人は、たしかに若い頃から長年1つのスポーツを続けていることがあります。たとえば、幼稚園や小学校の頃から10年近く同じスポーツをやっているというのはザラです。一方で、誰でも10年野球を続ければ大谷翔平になれるか? というと、まったくそんなことはないのは自明です。
同様に、ビジネスの世界でも、10年同じ仕事を続けていても、その領域で一流と呼ばれる人もいますが、反対に中々芽が出ない人もいます。
これはシンプルな話で、年数と成果は緩やかな相関はあったとしても「年数が長い=価値がある」ということはまったくない、ということです。冒頭に出てきた人事の方は、実際にそれをデータによって検証しているわけです。そんな彼はこう続けました。
「石の上にも三年より、大事なことは、どの場所を選ぶか。つまり相性です」
と。同意です。私が普段言う言葉で表現するとしたら「石の上にも三年よりはるかに大事なのは、どの石を選ぶか」です。