ぼくたち中高年にとって最大の不安は健康とおカネだ。いつまで生きるのかわからない。どれだけおカネがかかるのかわからない。

 北欧3国のように高福祉・高負担なら安心できるだろうが、日本の政府は信用できない。増税してもやらずぶったくりだろうと国民は思っている。だから自分で備えるしかないのだけど……。

 垣谷美雨の小説『老後の資金がありません』がヒットしているのは、そんな不安が広がっているからだろう。3年前に単行本で出たときはパッとしない売れ行きだったが、文庫になって化けた。1600円なら買わないけど、640円なら読もうという層が中心読者か(値段は税別)。

 内容はコミカルなシミュレーション小説。57歳の夫と4歳下の妻、28歳の娘、大学4年生の息子という4人家族。娘はもうすぐ結婚して家を出るし、息子も就職が決まった。家のローンだってあと2年で完済。あとは穏やかな老後が待っている……と思ったら不測の事態が発生する。それも次々と。

 娘の結婚式だの夫の父の葬儀だのと予定外の高額出費が続くうえ、夫婦そろって職を失ってしまうのだ。老後のためにと貯めたおカネはみるみる減っていく。はたして夫婦の老後はどうなるのか?

 フィクションではあるが、どの家庭でも起こりうる話だ。国は信用できないので自衛するしかない。まずは見栄のためのバカな消費をやめることだ。結婚式や葬式におカネをかけるのは愚の骨頂。呼ばれるほうも迷惑だ。親への援助も、できる範囲内で。

 おカネがないことも、職を失うことも恥ではない。中高年よ、開き直れ。

週刊朝日  2018年7月27日号

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