『空気を読まずに0.1秒で好かれる方法。』柳沼佐千子 朝日新聞出版
『空気を読まずに0.1秒で好かれる方法。』柳沼佐千子 朝日新聞出版
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 私たちが日常でよく使う「空気を読む」という表現。人間関係をうまく築いたり仕事を円滑に進めたりする際に必要なスキルとして、皆さんも認識しているのではないでしょうか。
 けれど、空気を読まずしてたった0.1秒で人を惹きつける方法が実はあるというんです。それを教えてくれるのが、本書『空気を読まずに0.1秒で好かれる方法』。著者の柳沼佐千子さんは今でこそ印象力アップトレーナーとして多くの企業で研修や講演をおこなっていますが、もともとは彼女自身が「嫌われ続けの人生」だったといいます。
 子どものころから人前で話すことが大の苦手。学校ではイジメに遭い、社会人になってからは事務職、司会業、ラジオ局のパーソナリティ、ケーブルテレビのアナウンサーなどさまざまな職業を経験したものの、どの職場でも人とうまくいかない現実に直面してきたのだとか。
 強烈なエピソードとしてはこんなものも。新しい美容院に行き始めて1年半ほど経ったときに担当の美容師さんから「柳沼さんが初めてうちの店に来たときのこと、今でもよく覚えていますよ。実は、ドアを開けて入ってきた瞬間、『うわ、この人誰が担当するんだよ。まさかオレ?』って心の中で思っていたんですよ」と言われたこともあるといいます。
 こうした第一印象について柳沼さんは「ピンクのスイッチ(サングラス)」と「黒のスイッチ(サングラス)」にたとえて説明しています。最初の印象が良いと、その時点で人はピンクのスイッチが入り、心の目にはピンクのサングラスがかかり、相手のあらゆる言動が良く見えたり信頼がおけると感じたりする。逆に、最初の印象が悪いと黒のスイッチが入り、黒のサングラスがかけられて、相手のあらゆる言動が気に入らなくなったり、疑いの目を持ったりするのだと......。
 厄介なのは、自分ではどちらの色のサングラスをかけているか気づかないこと。そのため、自分では相手のことを第一印象だけで決めた先入観ありきの判断をしているという認識がないこと。そして初対面で一度かけてしまったサングラスは、相手に変化がない限り、2回目、3回目に会ったときも自動的にかけてしまうものだということです。
 こう考えると、第一印象で「この人、好きだな」「好感を持てるな」と思ってもらうことがどれほど大切か皆さんもわかってくることでしょう。
 「人に好かれるために空気を読む必要はない」にくわえてもう一つ、柳沼さんのメソッドで驚くのが「正しく話せなくても大丈夫」というもの。しゃべりの技術の中でもっとも重要な要素は「声」だという柳沼さん。なぜなら人は話す内容ではなく、見た目や声の様子を頼りに内容を判断するからだというのが彼女の考え方。そのためにはどのような声の出し方や伝え方をすればよいかなども本書では具体的に書かれています。
 本当の自分を隠してまで場の空気を読むことを優先するのではなく、仕事であってもプライベートであってもそのままの自分で好かれる生き方をすることが本書の目指す姿なのだとか。そこには、「なんとなく感じが悪い」という理由で嫌われ続けてきた中で、自らを実験台に実践して追求し、「好かれるフォーム」を確立した柳沼さんならではの思いが感じられます。空気を読むことに疲れた人、なぜか人に悪い印象を持たれやすい人、人間関係をうまく築きたい人......そうした人は本書を一読して、ぜひ実践してみることをオススメします。