「平成のプロレタリア作家」による短篇集。表題作は、イジメの対象にされそうな名前の少女を主人公にするところからして、挑戦的な作品だ。

 母は宗教にハマり、父は愛人をこしらえて家を出た。入学間もない高校を中退し、大きな洗剤工場で働くマリ。熟女ばかりの職場での上下関係、作業の覚えが悪いとイジメの標的にされるなど、読者はマリとともに製造ラインの中に組み込まれた感覚に陥るだろう。

 目が離せなくなるのは、中学時代の同級生をイジメ自殺に追いこんだ首謀者の母親が職場の同僚で、娘の誕生日に招待される時からだ。拒めずに足を向ける展開は意表をつく。

 作中に登場するカタコトで話すフィリピン女性たちの、弱者ながらも仲間を重んじるあり方に希望を感じる。妙に明るく、規格外の面白さがある。

週刊朝日  2018年4月20日号