著者は松竹新喜劇の代表、3代目澁谷天外の妻。2016年5月に膵臓がんが見つかり、余命3カ月と宣告された。闘病記と思いきや、半生を振り返りながら、病院に閉じ込められることなく、がんと共に生きることを綴るアクティブな「日記」と言えるものになっている。

 病気発覚後、夫が「お前、何がしたいねん?」と問いかけたことに端を発し、人生初ライブ、映画初出演(「すもも」)、役者として25年ぶりの舞台(「裏町の友情」)、さらには米国ロサンゼルスでライブコンサートを行う──。絶望感に蝕まれることなく、「病気がわたしを表舞台に出してくれた」と言ってのける著者の力強さに心を打たれる。著者が常々唱える言葉を念頭に読み進めるといい。

 なんとかなるやろ、なんとかしよ!

週刊朝日  2018年3月2日号