著者は経営学者であり、経営診断の現場にも長年携わってきた。データと事例をもとに中小企業の現状を解説する。

 起業など華々しいイメージも伴うが、現実に中小企業を取り巻く環境は厳しい。とりわけバブル経済が崩壊を迎えた1992年以降は廃業件数が増加、起業数は低下の傾向にあるという。一方、震災復興・人口減少などの課題に向き合い、事業モデルを転換して躍進する企業もある。岩手県釜石市の小野食品は給食用の魚加工が中心だったが、2009年頃から三陸産の魚を新聞広告主体で提供する「頒布会」スタイルに転換。高齢化や個食化が進む社会状況を背景に、被災企業の中で存在感を放つ。

 最近はミャンマーなど近隣諸国への企業進出が注目される中、国内の現実に根差した記述に説得力が宿る。

週刊朝日  2018年2月23日号