「平成元年にはベンチャー企業もなく、伝統的な企業が並んでいます。銀行が多いのは今も昔も変わりませんが、同じような採用人数でも中身が変わってきており、女性の採用が増えています。平成元年当時の都市銀行は優秀な男子をどう集めるかに腐心していましたが、それが変わってきたのです。女子の大学進学率が上がったことが大きいと思います」
元年に大学を卒業した学生が入学したのは昭和60年だ。この年に約156万人だった18歳人口は、29年に卒業する学生が入学し平成25年には123万人に減っている。その一方で、大学進学率は上がった。そのため昭和60年の大学入学者は41万人だったが、平成25年は61万人で約20万人増えている。男子は30.7万人から33.9万人で3.2万人増にとどまるが、女子は10.4万人から27.4万人に2.6倍に増えている。入学者増の理由は女子が増えたからだ。だから、男子だけという採用では限界があり、女子の採用が増えているようだ。
次に各大学のトップ企業を見てみよう。元年の早慶は銀行だったが、東京大はNTTだった。昭和の終わりに、3公社が相次いで民営化された。3公社と呼ばれたのは日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社だ。日本国有鉄道は昭和62年に6つの旅客鉄道会社に変わった。日本専売公社は昭和60年に日本たばこ産業に、同じ年に日本電信電話公社が株式会社に替わっている。
民営化されたことで学生が選びやすくなり、通信技術トップで研究者採用も多いNTTは人気だった。しかもNTTの平成元年の採用者数は2100人だ。これだけの大量採用ということもあり、東京大だけでなく京都大で17位、早稲田大で5位、慶應義塾大で8位に入っている。
大量採用で見ると、平成元年は日本IBMが1460人の採用だ。各大学の就職者数を見ても、東京大13位、京都大6位、早稲田大2位、慶應義塾大5位といずれも上位に入っている。清水さんは「この頃はパソコンを売る仕事が主だったと思います。もう今はパソコン販売部門はなく、コンサルティングやAI開発の会社に変わりました」という。29年の採用者数は304人で元年の5分の1近くに減っている。