人口停滞時代は過去にもあったという話がおもしろかった。
1度目は縄文末期。平均寿命は30歳と短く、人々は自然との緊張関係の中で暮らしていたが、やがて人口は減少。農耕と国家を柱とする弥生文化が登場する。
2度目は平安・鎌倉時代。農業生産が行き詰まり、疫病に温暖化・乾燥化が重なって人口が停滞。農業危機の中で人々は権利の保障を寺社や貴族に求め、荘園制から鎌倉幕府という権力が生まれた。
3度目は18~19世紀の江戸後期。エネルギーと食料を自国内でまかなってきたが、自然災害や新田開発の行き詰まりで人口が停滞。幕末の動乱がはじまった。
つまり、人口の減少から増大に転じる時期には〈必ず人間と人間の協力関係が再構築され、そのなかから現代の「公共性」につながる動きが生まれてきたということです〉。4度目の停滞期にさしかかった現在も同じだと。
〈歴史に「もし」はないといいますが、「もし」を考えることは大切です。それは「ありえたはずの現在」を考えることでもあり、「次にどうすればよいか」を考えることにつながるからです〉
9月発売で、すでに4刷。こういう本が売れているのも希望です。
※週刊朝日 2017年12月1日号